BLOG

犬猫の混合ワクチン 正しく理解して適切に接種する①

こんにちは。東京都町田市のトリマー兼犬猫ごはん講座講師の橋本なみです。毎日暑い日が続きますね。トリミングではサマーカットをご希望されるお客様が増えていますが、サマーカットにも注意点がありますので、トリミングされる犬へは前々回の記事をご参考ください(o^―^o)

さて、今日は手作りごはんの話ではないのですが、私が常々多くの人に知ってもらいたいと思っている犬猫の混合ワクチンについてお話ししていきます。

第一回目はフラットな立場で、

●ワクチンの基本

●なぜ混合ワクチンを接種するのか

●混合ワクチンで予防を目的とされる感染症

●混合ワクチンを選ぶ基準

についてお話ししていきたいと思います。なぜこの話をしたいかというと、現在の日本では適切な摂取が行われていないことが非常に多いからです。混合ワクチンを接種させている方は絶対に読んでいただきたい記事になっています。

一般的に飼い主様が愛犬愛猫に接種させているワクチンは

■狂犬病ワクチン(主に犬)

■混合ワクチン

になるかと思います。狂犬病ワクチンについては過去にとても大事なお話しをしていますので、犬を飼われている飼い主様はぜひ読んでいただけると嬉しいです。第一回目は混合ワクチンの基本の基本についてのお話しです。この基本の基本のお話が、この連載記事の核となるものなので、一回目はあまりつまらないものかもしれませんがぜひ読んでいただけると嬉しいです。

【ワクチンとはどういうもの?】

人も犬も猫も、感染症にかかると体内では病原体に対する抵抗力(免疫力)ができます。ワクチンとはこの自然に行われる現象を「人工的」に行うことです。人工的にある感染症の免疫を付けさせて、その感染症にかからないようにするということです。

では、

【混合ワクチンはなぜ接種するの?】

理由は3つ。

①感染しないため

②広めない、うつさないため

③集団で流行させないため(集団免疫をつけるため)

です。狂犬病ワクチンは人が感染しないことを目的として存在していますが、混合ワクチンは犬猫が感染しないことを目的としたワクチンです。狂犬病は人畜共通感染症であり、法律で接種が義務付けられていますが、混合ワクチンが予防目的とする感染症は、犬のみ、猫のみの間で感染する病気であり、接種は任意によるワクチンになります。

日本での混合ワクチンの接種率は20~30%ですが、トリミングサロン、ペットホテルなどを利用される方にとっては身近なワクチンかと思います。

【混合ワクチンが予防目的とされる感染症とは?】

犬であれば、

■犬ジステンパーウイルス

■犬パルボウイルス

■犬伝染性肝炎

■犬アデノウイルスⅡ型感染症

■犬パラインフルエンザ感染症

■犬コロナウイルス感染症

■犬レストスピラ症

猫であれば、

■猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)

■猫カリシウイルス感染症

■猫ウイルス性鼻気管炎

■猫白血病

■猫クラミジア感染症

■猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)

になります。

【混合ワクチンを選ぶ基準】

混合ワクチンは上記の感染症を予防目的として存在していますが、混合ワクチンにも種類があり、必要に応じてその種類を決める目安というものがあります。その目安となるのが、『コアワクチン』『ノンコアワクチン』の分類です。

●コアワクチンとは、任意で接種が「推奨」されているワクチンです。感染すると重篤な症状や死にいたることもあるため、任意ではあるけれど接種が推奨されているワクチンのことです。

●ノンコアワクチンとは、生活環境やライフスタイル、地域の発生状況などに応じて接種が検討されるワクチンです。

つまり、接種する場合、コアワクチンは接種した方が良いワクチンであり、ノンコアワクチンは必要に応じて、といった感じです。

【コアワクチンについて】

犬のコアワクチンは、

■犬ジステンパーウイルス感染症

■犬パルボウイルス感染症

■犬伝染性肝炎

の三つです。

猫のコアワクチンは、

■猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)

■猫カリシウイルス感染症

■猫ウイルス性鼻気管炎

の三つです。コアワクチンについて少しお話しすると、

●犬ジステンパーウイルス感染症や犬パルボウイルス感染症、猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス)は感染力が高く、子犬や子猫が感染すると致死率の高い感染症です。

●パルボウイルスは年齢抵抗性というものがあり、年齢と共にかかりにくくなったり、かかっても軽症で終わることもあります。しかし、パルボウイルス自体は非常に生命力が強く、体外でも一年以上生きられるウイルスです。

●犬のコアワクチンに分類されていない犬アデノウイルスⅡ型感染症は、小阿波珍の犬伝染性肝炎を接種すると同時に予防できる感染症です。

【ノンコアワクチンについて】

ノンコアワクチンはコアワクチン以外のものを指します。

●犬パラインフルエンザ感染症は子犬でなければ感染することはないのですが、子犬を扱うペットショップやブリーダーの元では必要と言われています。

●犬コロナウイルス感染症は混合ワクチンに含まれているものの、非推奨のワクチンです。感染防止の根拠が不十分であるからです。

●犬レストスピラ症は他の感染症とは異なり、感染源がウイルスではなく細菌です。この細菌を保有している保菌動物と言われるのがネズミです。保菌したネズミの尿で汚染された田んぼや川に入ったりすると足の裏に傷などあるとその傷から感染したりします。人もそのような汚水から感染する可能性もある「人畜共通感染症」です。レストスピラは250種以上の血清型があります。つまり、250種以上も種類があるのですが、その細菌に対応したレストスピラのワクチンでないと感染予防はできません。日本のレストスピラ症のワクチン血清型(種類)は250種以上の中で主に4種類だけに対応した血清型であり、それが「カニコーラ」、「イクテモヘモラジー」、「グリッポチフォーサ」、「ポモナ」の4種類です。しかし、実際に日本で確認されている血清型は、「カニコーラ」、「イクテモヘモラジー」、「オーストラリス」、「ヘブドマディス」、「オータムナリス」です。これは、ワクチンの血清型と実際感染が確認されている血清型が2種類しか一致していないということです。

実際に動物病院で扱っている混合ワクチンには色々種類があります。それを次にお話ししていきます。

【犬猫の混合ワクチンの種類】

■5種混合ワクチン…犬ジステンパーウイルス、犬パルボウイルス、犬伝染性肝炎、犬アデノウイルスⅡ型感染症、犬パラインフルエンザ

■6種混合…5種+犬コロナウイルス

■7種混合…6種+犬レストスピラ症(1種)

■8種混合…7種+犬レストスピラ症(2種)

■10種混合…8種+犬レストスピラ症(4種)

犬のコアワクチンは3種類なのに対し、日本の動物病院で扱っている混合ワクチンは最低5種からになります。

■3種混合…猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス)、猫カリシウイルス、猫ウイルス性鼻気管炎

■4種混合…3種混合+猫白血病ウイルス

■5種混合…4種混合+猫クラミジア

(猫エイズのワクチンは混合ワクチンではなく、単体のワクチンです)

【混合ワクチンの種類を決める基準】

一般家庭で暮らす犬であれば5種、その中で川遊びなどアウトドアをするご家庭の犬には7種以上が勧められる場合があります。猫であれば、室内飼育をしている子なら3種で十分であり、屋外に出る子であれば4種以上が勧められる場合もあります。

【製造法によるワクチンの分類】

ワクチンは製造法によってもまた分類があります。

①弱毒生ワクチン

②不活化ワクチン

①生ワクチンとは、生きている病原体の毒素を弱めて接種することで、体内で増殖させて軽く感染させることで抗体を付けるものです。免疫持続期間が長いワクチンです。

②不活化ワクチンとは、細菌やウイルスを不活化(死菌化)させたものを用いて作られるワクチンで、免疫持続期間は短いです。

混合ワクチンの中のノンコアワクチンに分類されるレストスピラ症と狂犬病ワクチンが不活化ワクチンであり、それ以外が生ワクチンです。犬の混合ワクチンに含まれる犬レストスピラ症だけ不活化で作られており、免疫持続期間は半年ほどです。

【混合ワクチンの接種間隔】

日本では、一般的に多くの動物病院で一年おきの接種が行われています。

さて、ここまでが第一回目のお話しになります。簡単にまとめると、

●犬猫の混合ワクチンは任意のワクチン

●混合ワクチンには種類があり、犬では5種から、猫では3種からがある。

●接種が推奨されるコアワクチンは犬も猫の3種であるのに対し、実際に日本にある混合ワクチンは犬では最低5種からになる。

●ワクチンの製造法によって免疫持続期間が異なる。

です。では次回から、私が本当に伝えたいことをお話ししていきます。今回はそれを伝えるためには基本を知ることが必要になってくるためこのように混合ワクチン自体についてお話ししました。

今日も東京は激暑です🌞手作りごはんを食べている子は食材から水分がある程度とれますが、フードを食べている子は水分の接種と涼しい時間帯のお散歩で熱い夏を乗り切ってくださいね。

今日もお読みくださりありがとございました。